ライブ オア デッド 1



〔ファースト ハーフ〕



伝統は 一世紀の昔より変ることなく

規律乱し者は 未だ体罰を受く

しかし 痛みに涙するだけでなく

彷徨いし心をも救われれば 溢れる花々に

希望の光 安らぎを得る

匂い立つ芳香は 風に吹かれ漂い

髪にかすれば しばし足が止まる

パブリックスクール 緑の芝生 温室のバラ園

パブリックスクール 多感な少年たちの学び舎







「聡!こっちに降りて来いよ!」

和泉が手を振って、二階席の僕を呼んだ。

高等部体育館、バスケット第一コート(左側)。

今日は朝も昼休みも、和泉に試合だからと念を押された。

「ここでいいよ。試合に出るわけじゃないし、邪魔なだけだよ」

「邪魔じゃないですよ!村上さんは監督!」

北沢の言葉に、観客席に追いやられた二年生たちからブーイングが飛ぶ。

「何でぇ、俺たちは応援団で村上さんは監督かよ」

「北沢!俺たちも監督してやるから、そっちへ行かせろー!」


ひな壇式の観客席にざっと100人近く居るだろうか。

バスケットコートを二面取っているので、対面側は第二コート(右側)の観客席になる。

左右に分かれて二年生と三年生。6対4の割合で二年生の方が多い。

三年生は進級と同時に大学受験に向けての勉強が始まる。

試合を見に来ている三年生も試合までの待ち時間、参考書に目を通している者が多い。

騒ぐ二年生と静かな三年生。

三年生になると、雰囲気は随分変わるようだ。


「村上さん、下へ行って下さいよ。本条も北沢も上手いんだけど、頭に血が上(のぼ)ると冷静さを欠くプレーするから」

「俺が俺がで個人プレーに走るし、人の注意は聞かないし・・・村上さんの言う事なら聞くと思うので」

今度は和泉と北沢のブーイング。

「試合前から頭に血が上ってそうだね」

クラスメイトや同じ学年の皆と笑い合い、ふざけ合って過す放課後。

ずっとそんなふうに学校生活を送って来たのに、それが出来なかったのはほんの1、2年の間だけだったのに。



胸いっぱいに広がる熱い思い

放課後の懐かしさや友達の優しさ

2階の窓から木漏れ日が差し込み

美しい光のきらめきに目を細めれば

清らかに深い 感謝の日々

ありがとうと 僕は呟く



「聡はこの椅子に座ってろよ」

和泉がパイプ椅子を用意してくれていた。

「村上さん、B組の渡辺。紹介しろってうるさいんで。一応こいつもメンバーのひとりです」

「誰がこいつだよ。こんにちは、村上さん。北沢とは中等部でルームメイトだったんです」

北沢とは対照的に渡辺のおっとりした感じは、二人のバランス良い友達関係を思わせた。


「今日は三年生遅いな。取り合えず先発メンバー決めようぜ」

試合開始前15分。軽い練習を終えて、和泉を中心に二年生が集まる。

クラブではないのでユニフォームはなく、それぞれに思い思いの恰好をしている。

和泉はトラックジャケットとパンツ。北沢はランニングにインナーシャツを着てハーフパンツ。渡辺はパーカーにコンビボトムというように。

背番号の変わりに番号入り腕章を付ける。

「番号配るから。それと先発は今決めた通りに、おれ、北沢、渡辺と・・・」

和泉が番号入り腕章を配りながら、最終確認を詰めて行く。


先発メンバー5人。

ポイントガード 11番 和泉、パワーフォワード 10番 北沢、

スモールフォワード 4番 渡辺、以下 センター 5番、シューティングガード 12番。


「おっ、渡辺。来たみたいたぜ、三年生。遅ぇんだよ、余裕の振りしてんじゃねぇって!」

「北沢、聞こえるだろ。どうしてそう攻撃的かな・・・。ケンカじゃないんだから」


10人くらいの団体が、第一コートに向かって来る。

それまで静かだった三年生の観客席がざわめきと共に盛り上がり、一気に歓声が上がった。


改めて三年生の観客席に目をやれば、見知った顔ばかりに思わず顔が綻ぶ。

そして試合に出るメンバーたち・・・・・・渡瀬!

渡瀬がいた。三浦も谷口も、他のみんなも僕に気付いて手を振ってくる。

「渡瀬たちも出るの?みんなも久し振りだね!学年が違うと、なかなか会えないものなんだね」

彼らと顔を合わすと学年の違いも何だか薄らいで、嬉しくて思わず駆け寄った。


「聡、元気そうだな」

「たまには、こっちのレストルームにも来いよ」

「今日はもちろん、俺たちの応援だよな」

「さぁてね、どうしようかな。僕は監督らしいから」

他愛ない冗談に零れる笑顔、笑い声。


ひとしきり話していると、観客席が再びざわめき出した。

今度は二年生、三年生全体がざわめく中、あきらかに中等部とわかる生徒が第一コートに向かって歩いて来る。

「・・・・・流苛君?渡瀬、向こうから来るの、流苛君だよね」

「おっ、来た?俺が呼んだんだ」

三浦が流苛に向かって手招きをした。

途端に三年生観客席が反応する。

「おおっ!三浦の趣味かー!」

「三浦!お前、ガキは嫌いじゃなかったのか!」

「中坊!食われんなよ!!」


―透き通る肌、黄金色(こがねいろ)の巻き毛、色素の薄い瞳の幼い容姿の男の子―


ただでさえ目立つ風貌の流苛は、高等部では尚のことだった。

「よう、流苛。元気にしてたか?」

三浦がたぶん体育館に居るほとんどの生徒の注目を浴びながら、流苛に声を掛けた。

「うん。三浦さんも元気?渡瀬さん、谷口さん、・・・村上さん、こんにちは」

「・・・・・・流苛?」

「三浦さん、僕にいいもの見せてくれるって何なの?」



渡瀬たちの謹慎が解けた後、しばらくして流苛も寮へ戻った。

僕も三浦たちも流苛に会うのはそれからだから、一月(ひとつき)やそこらで背丈や風貌が変わることはまずない。

なのに、以前の流苛とは見違えるような雰囲気だった。


「何って・・バスケの話してた時、流苛見たいって言ってただろ。
今からバスケの試合するんだ、
俺たちも出るから・・・」

やや戸惑いながら話をする三浦が何だか少し可笑しかった。

どう変ろうとも、三浦は流苛が可愛くて仕方ないのだろう。

反対に流苛は、あからさまに迷惑な顔をして言った。

「僕だって忙しいんだもん。急に言われたって見れるかどうかわからないでしょう。
これからはちゃんと用件を先に言って」

呆然と流苛を見つめたまま言葉の出ないでいる三浦に代わって、そこは渡瀬がそつなく対応した。

「そうだな、流苛だって忙しいのに悪かったな、用件も言わず。流苛も何かしてるのか?」

「僕もバスケットボールしてるの!竹原君が誘ってくれて、毎日放課後1時間みんなでしてるんだもん!」

「そうか、良かったな。それじゃ流苛が試合に出るときは連絡くれよ。俺たち見に行くから」

「本当、渡瀬さん!三浦さんも、谷口さんも絶対見に来てね!約束だよ」

広がる流苛の笑顔。流苛が変ったのは表情だ。


―挨拶をすると、上目使いに窺がうようなしぐさは、その風貌と加味して神経質そうな一面を垣間見るようだった―


以前の警戒心の強い表情が消えていた。

この大勢の中を物怖じすることなく歩いて来たことが、その証明。

そして手を振り、掛け声のかかる中を駆け足で帰って行く流苛。

君の姿に、もう天使は見えないよ。


―妖精は少年になったのだろうか―


僕はなったと思うよ、白瀬さん。

天使が少年になったように。



「何だあいつ・・・・・。三浦さん?渡瀬さん?谷口さん?」

「お前こそ何だよ、まだお兄ちゃんって呼ばれたいのか。最初は嫌がってたくせに」

谷口も流苛の変化に戸惑う三浦が可笑しくて仕方がないようだった。

「そんなんじゃねぇ!けどな、あれだけひっついて来てたくせに、コロッと態度変わりしやがっ
て。
しかも自己中のとこは全然変わってねぇし!!・・・ところで竹原って誰だ?」

「知らねぇよ・・・」

散々笑っていた谷口も、さすがにうんざりした視線を渡瀬に送った。

「全く・・・子離れの出来ない親みたいだな。まぁ、無理もないんだけどね。三浦が一番懐かれていたからな」

渡瀬は意外にも真面目に三浦を擁護した。

流苛と同室だった渡瀬にも、三浦と同じ気持ちがあるのかも知れない。


「だけど、渡瀬たちが今日の試合に出るなんて思ってもみなかったよ」

「出てくれって頼まれたんだ。この前は俺たちが負けたんだってな。
だからってわけじゃないけど、運動不足だったしちょうどいい」


「そろそろ時間なんですけど。・・・聡はどっちにつくんだよ」

和泉がゲーム開始を伝えに来た。ついでに、いつまでも三年生のところで話し込む僕が、どっちつかずに見えて気に入らないようだった。

「何?聡、呼び捨てにされてんのか?生意気な奴だな、俺が言って・・・」

「ちょっと・・・やめてよ、三浦。僕が自分で言ったんだから」

病気で一年間休学した僕と、引き篭もりで入学が一年遅れた和泉。

和泉とは同じ年の親近感からお互い名前で呼び合うようになったけれど、三浦たちにはそんなことなどわかるはずもなかった。

「・・・じゃあ、みんなも頑張ってね。僕はもちろん二年生の応援だよ」

ちえっ・・≠ニ、舌打ちをしながら笑うみんなに手を振って、和泉の後を追った。


「和泉、待って!僕は二年生の監督だからね」

「・・・・・・なら、らしくしろよ」

和泉は少し意地を張ったような、しかしほとんど気恥ずかしそうに口を尖らせた。





三年生先発メンバー5人。

ポイントガード 7番 渡瀬、パワーフォワード 8番 三浦、

スモールフォワード 6番 谷口、以下 センター 9番、シューティングガード 14番。



二年生、三年生先発メンバーが第一コートに揃う。


コートに入ると三年生は早かった。


「ジャッジは二年がやれ。10分間ずつ第4クォーターまで、間のインターバルは2分間、ハーフタイムは10分間。
ロスタイムはなし。延長は5分(競)・2分(休)のサドンデス。そんなとこか」

手際よくルールを決めて行く渡瀬だったが、出来るだけ短時間で済まそうという意向が感じられるものだった。

まるで時間がもったいないというような渡瀬の決め方に、一方的なことも加味して北沢はよけいにカチンときたようだった。

「勝手に決めんな!」

「先にルールくらい決めておけ。・・・・中等部と変らないな。ジャンプボールは誰が行く?谷口行けよ」

二年生の方は和泉がジャンパーでサークルの中に入った。

「別に勝手に決めてくれてもいいですけど、あんまりイイカッコしてると大恥かきますよ」

和泉も北沢に負けず劣らず、挑戦的だった。

「その言葉、そっくり返してやるよ」

和泉が渡瀬に向かって言った言葉に、返答したのは谷口だった。

渡瀬は和泉を全く無視して、ジャッジに声を掛けた。

「さっさとトスしろ」



ジャッジがボールを真上にあげる。

和泉と谷口が同時にジャンプし、指先でタップ(弾く)!

二年生、三年生大声援の中、第1クォーター 開始。


最初にボールを支配した和泉たちが速攻で三年生コートを攻め立てる。

北沢がドリブルでディフェンスを抜き、そのままランニングシュート!

ザッ!! 

ゴールと同時に上がる歓声。


リングに弾かれたリバウンドボールを渡辺がキャッチ、相手コートに走り込む和泉にショルダーパスを出す。

「本条!」

「ナイスパス!渡辺!」

和泉がフェイクでかわして、シュート!

ザンッ!! 


和泉を中心にパスを回しながら、三年生の動きを読む二年生。

北沢がダッシュで切り込み、フォーメーションが崩れたところに逆方向から和泉がゴール手前に走り込む。

渡辺のディフェンス横を抜くバウンドパス。

和泉が拾い上げて、シュート!

ザッ!! 


盛り上がる二年生観客席。


「いいぞ、本条―――!!その調子、その調子!!」

「みんなぁ!止まってんじゃねぇ―――!!押せ!押せ――っ!!」


和泉、北沢のシュートが面白いように決まる。


渡瀬や三浦たち三年生もそれなりに得点は重ねているものの、やや押され気味のようだった。

それでも、まだ始まったばかりの余裕からか渡瀬たちに焦る様子はなく、試合はコンスタントに点を取り合う展開になっていた。


「三浦、右!」

渡瀬の指示と同時に、三浦が右ゴール下に走る。ポッカリ空いたディフェンスの死角部分。

谷口が正確なパスを出して、三浦のジャンプシュート!

ザンッ!!


「・・・ごめんっ!本条!!」

「ドンマイ!平気、平気。気にするなよ!」


相変わらず冷静な渡瀬の見極め。



僕も中等部の時は、何度か一緒に渡瀬たちとバスケットボールをした。

あまり運動は得意な方ではなかったので、パスをまわす程度だったけれど。

それでも時々、

―聡!右側に走れ!―

渡瀬の指示に右側に走れば、僕の前に送られて来るバウンドパス。

キャッチして、シュート!

ザッ!ゴールネットが揺れる。

―ナイスシュート!聡!―

谷口の大きな声に顔が赤らんだ。

苦手なはずのバスケットボールが、嬉しくて楽しい瞬間だった。



第1クォーター 終了。

二年生 28 対 三年生 22

インターバル 2分間。


「お疲れさま。大健闘だね」

上機嫌でコートから帰ってくる和泉たちにタオルを渡す。

「いいよ、聡がそんなことするなよ。けど、大健闘って言うのはおかしいぜ。
大健闘は格下に使う言葉だよ。少なくても互角かな」

和泉がガサッと僕からタオルを取上げて、それぞれに渡した。

「そうですよ、村上さん。今の実力からしたら俺たちの方が上だよな」

「ほんと、ほんと、今日なんて初っ端からリードだし」

「第2クォーターでさらに突き放してやるぜ!」

他の皆も和泉や北沢に同調する。

「こいつら、行け行けドンドンだから。すみません、村上さん」

渡辺だけが、おっとりかまえていた。

「あははっ、渡辺君が和泉たちのブレーキになってくれるからいいよ」


「よしっ!行くぞ!!」

和泉の掛け声とともに5人がコートに向かう。





第2クォーター 開始。


二年生の攻勢はそのままに、三年生のブロックにも果敢に突っ込んでシュートに持っていく。


「11番(和泉)、チャージング!
(攻めている側/和泉が、守っている側/三年生のプレーヤーに対して強引に押したり当たったりすること)」

「ジャッジ、どこ見てんだよ!今のはブロッキングだろ!
(相手プレーヤー/この場合は守っている側の三年生が、体を使って相手プレーヤー/和泉の邪魔をすること)」

チャージングを取られた和泉が、納得いかないと言わんばかりに抗議する。

「・・・えぇ?・・やっ、そうかな・・・いや・・でもあれはどう見ても本条の・・・」

チャージングとブロッキングのファウルは、競り合っている時は特にわかりづらい。

見方によれば攻めている側が強引に突っ込んだようにも見えるし、守っている側の体が前に出すぎて攻めている側の邪魔をしたようにも見える。

つまりそれほどチャージングとブロッキングは、ジャッジの判定に左右されるファウルとも言える。

「頼んねぇジャッジだな。ブロッキングでいいぜ。そらよ、ボール」

和泉の相手は三浦だった。三浦はどうでもいいみたいに転がるボールを和泉に放り投げた。

和泉、フリースロー 2本(シュート動作を邪魔/ブロッキングされたことによる)

鮮やかに決めるも、先ほどの三浦の態度がしゃくにさわるのか、その顔に笑みはなかった。



飛び交う声援 響き渡る歓声

揺れるゴールネット

ファインプレーに鳴り止まぬ拍手 足踏み

駆け抜ける足音 バッシュが鳴る

飛び散る汗は 青春の躍動



渡辺からのロングパスを北沢が速攻でフックシュートに持ち込む。

ゴールに対して体を半身に開き、片手で手首のスナップを効かせて放つ!

ザッ!!

ナイスシュート!!



第2クォーター 終了。


二年生 52 対 三年生 40

ハーフタイム 10分間。


絶好調の北沢を先頭に、5人がコートから戻って来た。

「村上さん!ますますリードが広がりましたよ。残念だけどこのまま逃げ切りだね」

「本当だね、10点以上開いてるよ。後半戦もこの調子で行こう」

そうは言ったものの渡瀬たちの方を見ると、点差は第1クォーターよりさらに開いているのに終始笑みが零れている。

「今日の三年生はやけに余裕ぶってるよな。
特に7番(渡瀬)と8番(三浦)と6番(谷口)・・・前の時にいなかった三人だ」

和泉のぶっきらぼうな口調。

和泉には渡瀬たちの変に余裕を見せる態度が、どうにもカンに触るようだった。

「あの三人、確かに上手いんだけどね」

北沢はスコアボードの開いた点差によほど自信があるのだろう、上手いと言いつつあきらかに渡瀬たちの実力を見くびっていた。

僕の知る限りでは、まだ充分に余力があるように思える。

ここは率直に僕の意見を伝えた。

「この前の三年生のメンバーは見ていないからわからないけど、今日のメンバーはこんなものじゃないよ。
後半戦はもっと競り合いになると思うから、気を引き締めてね」

「・・・だよな、油断は禁物だな。村上さんの言う通り、気を引き締めて行こうぜ」

北沢は渡瀬たちのプレーをきちんと把握しているので、納得するのも早かった。


「聡は良く知ってるもんな」

「えっ?・・・・・・」

後ろからの声に、僕が振り向くより早く和泉はコートに走って行った。


ハーフタイム終了。 


「さぁ!後半戦だ!気を引き締めて行くぞ!」

北沢の掛け声を合図に、5人がコートに散らばった。

コートチェンジで第3クォーター 開始。


開始早々、二人のディフェンスを抜く和泉のランニングシュートが決まる。


―聡は良く知ってるもんな―

和泉の言葉に

―へへっ、やきもち。あいつ子供みたいなところあるから―

思い出す北沢の言葉・・・。


「和泉!ナイスシュート!その調子、その調子!!」

僕の声援に一瞬はっとした表情を見せた和泉だけど、その表情がゆっくり笑顔に変わって、そしていつものお決まりの仕草。


―和泉が親指を立ててウインクをする―



「いずみー、ナイスシュート!」

二階席からも和泉に声援が飛ぶ。やや遅れ気味の・・・・・・。


「先生!」

いつ来たのか、二階観客席の二年生側最前列に先生がいた。

和泉のシュートが決まって、ちょうど三年生スローインから始まるところだったので、プレー中のみんなも先生に気がついたようだった。

「兄貴・・・」

和泉の驚いた顔。

「兄貴・・・?お前、気に食わねぇ名前だと思ってたら、弟か」

それまであまりやる気のなさそうに見えていた三浦の目が、俄然光出した。

その三浦の横で、ガックリ両手を膝に落としながら呟く渡瀬の声が聞こえた。


「・・・・・デッドだ」



※バスケットボール監修:カヲル







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